薔薇の欠片
「これを見たとき、負けたと思いましたよ。
それでも“負け”を認めたくなくて強がってみましたけど……」
それが貴方の忘れ物です、
そう言い残して高藤さんは去っていった。
少し肌寒い風が吹き、
夕日も落ちかけている。
私は、恐る恐る紙を広げた。
「あ……あ……」
どうして、
忘れることなんてできないのだろう。
私はその場に座り込んだ。
瞳から、次々とあふれ出す雫。
戻れるのなら、
今すぐに戻りたい。
こんな風に、
貴方と一緒にいられればよかった。
私が目覚めたとき感じた違和感は、
きっと、ぬくもりがなかったからだね。