薔薇の欠片
「もともと憂のだから、返すわ」
淡いピンク色の小さな香水。
百合は私の手を取って、ボトルを私の手のひらにのせる。
「やっぱり私がつけるよりも、憂のほうが似合うわ」
ピースが
埋まった気がした。
百合は私に優しく抱きついた。
私はよく分からずに困惑していると、百合が鼻をすすりだした。
「ごめんなさい。
私、どこかで憂のこと軽蔑してた。
なにも、あの人じゃなくてもって。
だけど……嫌だよ、そんな憂。
前の憂に戻ってよ。
あのときの憂、すごく楽しそうだった。
キラキラしてた。
思い出して。
あの人と幸せになって」
百合の言葉を聞いて、私の瞳からも涙が零れ落ちた。