薔薇の欠片
貴方の泪を止める術が欲しい
あの日を境に、
私と玲さんは時々会うようになった。
別に約束しているわけでもないのだが、
空が曇っている時、必ずといっていいほど会う。
それが
偶然なのか、
必然なのか、
私にはわからない。
だけど、空が曇っている日は楽しくてつい、
いつもよりも念入りに身だしなみに注意する自分がいる。
街に出ると、
やはり彼に会った。
「最近、よく会いますね」
玲さんは得意の笑みを浮かべる。
つられて私も笑ってしまう。
「本当、会いますね」
「嫌だったりしますか?」
私は彼の優しい意地悪に少し目を丸くした。
「そんなことないです! むしろ、嬉しいです」
「そんなこと言ってもらえると僕も嬉しいです」
だけど、と彼は続けた。
「もう少し経てば、会うこともなくなってしまいますね」