薔薇の欠片
甘い甘い悪夢でした
暗く湿った洋館の中で僕は息を切らしてベッドに横たわっていた。
嫌な夢をみた。
日光に当たってしまった僕がいた。
僕は体を起こして、壁に掛けてあったマントを取った。
僕が生きる世界は日光が当たる世界じゃない。
何もかもが闇に包まれる、この世界だ。
なんせ僕は吸血鬼だから。
僕はマントを羽織って、森の奥深くにある洋館から出ると宙に浮いた。
今日は人を待たせている。
森を東の方へ出ると、街の隅のほうの目立たないところへ出た。
そこで僕は宙から降り、少し歩いた。
薄く電灯がともる下で、それはいた。
「玲!」
僕に気がつくと人間の女は抱きついてきた。
そうして、異変に気づいたらしい。
「玲?
なんか冷たいけど、どうしたの?」
きっとこの女は、僕の体温のことを言っているのだろう。
馬鹿馬鹿しい。
気づかずにいれば、何も知らずにいれたのに。