薔薇の欠片
貴方は戸惑い 私はもう引き返せない
僕は太陽が顔を出さないときは、彼女と会えるように仕組んだ。
それでも僕は偶然を装った。
「最近、よく会いますね」
彼女はやわらかく微笑む。
……僕には到底できない笑顔だ。
「本当、会いますね」
「嫌だったりしますか?」
少し、意地悪をしてみた。
きっと彼女は否定する。
「そんなことないです! むしろ嬉しいです」
ほら。
「そんなこと言ってもらえると僕も嬉しいです」
だけど、いつまでも待たされるのは気が向かない。
後から出すつもりだった切り札を、まさかもうこんなに早くに出してしまうなんて。
「だけど、もう少し経てば会うこともなくなってしまいますね」
彼女は目を丸くして驚いた。
「どうしてですか?」
……わかっているくせに。