BEST FRIEND

「仕事どう？」高谷は突然切り出した。「転職したばっかりで大変だろ？」
美香は中企業の事務職に就職したが、最近転職したのだ。
「まだ分からないことだらけよ。こないだ初めて添乗でカナダ行ったの。乗り継ぎばっかでホント大変だった！」美香はため息まじりに、でも楽しそうに喋った。
「ちゃんと旅行主任者の勉強して資格とったもんな。美香は偉いよ」
「ずっと旅行関係の仕事したかったから」美香はうつむいて言った。「新卒の時は受からなかったからさ。今ﾌﾗﾝｽ語も習ってるの」
「へえ、すごいな」
「高谷はどう？そういえばアフガン行ってたって聞いてびっくりした」
高谷は以前から希望していた報道に移ったのだ。
「俺は前線には程遠いところにいたから大丈夫さ。町の人や、そこの生活や空気を伝えたいって思ったんだ」高谷のこういった講釈が美香は好きだった。
「高谷さんの奥さんは大変ね」美香は言った。
「何言ってんだ。亭主元気で留守がいいって人だよ」高谷は笑った。