美香
初めに目が覚めたのは一瞬だった。
まだ病室には戻れないらしく、どこなのか看護婦たちがすぐ側にいる部屋の隅に、
ぽつんと寝かされていた。
口元がくすぐったくて、酸素吸入器を払いのけながら起きると、
看護婦が一人すばやく駆け寄って来て、吸入器を元に戻す。
「しばらくはこのままね。トイレは大丈夫?」
美香は尿意を感じたけれど、それを看護婦に伝える前に、再び激しい睡魔に襲われた。
それからは、何度も目を覚ましては眠ることを繰り返し、
意識がはっきりと戻ったのは、廊下が薄暗く静まり返ってからだった。
とぎれとぎれに意識が戻っても、身体を起こすことはどうしてもできず、
看護婦に管を入れて尿を採ってもらう。
排尿感がまったく無いのに尿意が消えてゆく事が、
意識もなく痛みも感じずにえぐり取られたものへの、
どうしようもない執着心を呼び覚ました。
まだ病室には戻れないらしく、どこなのか看護婦たちがすぐ側にいる部屋の隅に、
ぽつんと寝かされていた。
口元がくすぐったくて、酸素吸入器を払いのけながら起きると、
看護婦が一人すばやく駆け寄って来て、吸入器を元に戻す。
「しばらくはこのままね。トイレは大丈夫?」
美香は尿意を感じたけれど、それを看護婦に伝える前に、再び激しい睡魔に襲われた。
それからは、何度も目を覚ましては眠ることを繰り返し、
意識がはっきりと戻ったのは、廊下が薄暗く静まり返ってからだった。
とぎれとぎれに意識が戻っても、身体を起こすことはどうしてもできず、
看護婦に管を入れて尿を採ってもらう。
排尿感がまったく無いのに尿意が消えてゆく事が、
意識もなく痛みも感じずにえぐり取られたものへの、
どうしようもない執着心を呼び覚ました。