美香
 隣で眠る敦司の丸めた背中に
ぼんやりと目を向けながらコーヒーを飲む。
 敦司とは、一緒に暮らすようになってもう三年になるけれど、
戸籍上正式な夫婦ではない。
子供ができたら籍をいれなければと、何となく言っていた時期もあったが、
そんな話もいつのまにかされなくなってから随分と経つ。

 熱いシャワーを浴びながら、お腹に手を当ててみる。
 病院に行ってみよう。
 バスルームの鏡に裸の自分を映す。
余分な肉などどこにも見当たらない、女子高校生の価値観くらいでしかおよそ綺麗とは言えない美香の身体には、たくさんの痣と、それに重なるように紫色の小さな跡がある。

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