コンビニラブ
ため息混じりにレジに立つ伸治だったが、

実際に、そのモデルのファンでもなんでもない伸治にとって、

その人物が、本物だろうが、偽物だろうが、

間接的には全く支障の無いはず。


同じ大学に通っているんだとか、
確かな情報の中だったならばともかく、

二度と会えるかどうかも分からない、
それまで、興味もなかった人物に、何を期待することがあるのだろうか?


よくある、
『街で見かけた芸能人』ってやつに投稿しても、採用すらされない程度の、曖昧なネタだ。


そんなんでも、
アルバイトに向かう本来の目的に対して、
この数日、
なんとなく、足取りが軽やかで前向きだったことは確かだった。


「夢見るくらいイイいだろ!」


また悪かったのは、
一度、期待してしまったばっかりに、
結局、なんら変わらぬ日常が、
以前よりも、もの寂しく感じられてしまったこと。


五月病?
そうでなければ、中だるみ…?


ここしばらくは雨が続いていて、
このまま梅雨にでも入ったなら、
もっとユウツになってしまいそうだ。



「あ〜。アキラだぁ。」


そんな店員の気持ちなど知るはずのない、
ギャルといわれているであろう、雑誌を立ち読みしている客の、甲高い声が店内に響いていた。


「見てみぃ、これヤバくなぁい!可愛いすぎだし〜!」

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