コンビニラブ
『写メ撮って送って!』

『遠すぎて、よく分からないんじゃね?』

『そこをなんとか頑張って!』

『しょうがねーなー!』



この時、残念に思っていたのは、
実は伸治の方で…

本人がソレに気づいたのは、
ダイアモンド富士を見に行った、現場でだった。


その日は朝から暖かく、
気温が上昇したため、かなり雲が多かったのだが、
日没までにはどこかへ流れ去り、遠くに富士山を見つけることができた。


ビルの後ろにそびえる富士山は、双眼鏡から覗けば、それはそれは立派なもので、
自分の持っているカメラでは、
なかなか、それが伝わらないと感じ、

“本人が来て、生で見れれば良かったのになぁ”と、

アンのことばかり考えている。

すると、

あの日、慎重になれなかった自分が悔やまれてならず…

その苛立ちの矛先は、
あの正体不明のカメラマンにと向けられ、
周りでカメラを持つ者を、鋭い視線で見渡してみたりもした。


そうもしているうちに日没となり、
ついに、
夕日が富士の頂上と重なる瞬間、

歓声がわくとともに鳥肌が立ち、

高価なシャッター音につられて、
伸治も負けじと、デジカメ音を響かせた。


携帯電話でもチャレンジしたり、
とにかく、時間の許す限り、
写真を撮ることに専念していた。
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