コンビニラブ
吉野がマンションの前に着くと、独り、女の子が立っていた。


オートロックを解除してドアが開き、吉野は中に入った。

そして、
しばらくたつとドアは閉まる。

ひとつも反応をしない、その女の子が気になって振り返る吉野は、
もう一度、外に向かって足を踏みだした。


また、ドアが開き、
今度は目を合わせた彼女は、少し驚いた様子だった。


「入らないでいいの?」

吉野が聞くと、

「部屋番号分からないので。」

そう答える彼女に、軽く不信感を覚えた。


「え?だって、誰に用事?ケータイも知らないの?」

「…村上伸治くんて、ご存じですか?」

「あぁ、はい。彼の番号なら知ってますけど、」

「ホントですか!」

「あ、じゃあ、こうしましょ!ここから、彼を下に呼びましょうかね!」

「あ、はい!お願いします!」


吉野は彼女に見られないよう、自分の身体で隠して伸治の部屋番号を押し、インターホンを鳴らした。


「…」

「…留守みたいですね。」

「ですね。…じゃあ、お願いがあるんですけど。」

「はぁ。何でしょう?」

「コレ渡しておいてもらえますか?」

「…僕がですか?」

「あ、風邪薬なんです。借りたの全部飲んじゃったんで、新しいのをと思って…」

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