着せ替え人形


リビングに入ると、後ろ姿の彼がいた。


ドレスの支度をしているらしい。


「こんばんは」


「あぁ…座って」


素っ気ない反応。


締切が近くて余裕が無くなっているサインだ。


言われた通り、椅子の上に腰をおろす。


「今日は何をすればいいんですか」


鞄を床に起きながら、こちらをまだ一度も見ない彼に尋ねた。


「これを着てベッドの上に座ってるだけ」


そう言って真っ赤なドレスを渡される。
やっとこっちを向いてくれた。


座ってるんじゃなくて寝てるの間違いでしょ。


そう口答えしたくなったけどやめておこう。



「わかりました」



おとなしくドレスを受け取ると、あたしは寝室へと向かった。


< 17 / 107 >

この作品をシェア

pagetop