着せ替え人形
リビングに入ると、後ろ姿の彼がいた。
ドレスの支度をしているらしい。
「こんばんは」
「あぁ…座って」
素っ気ない反応。
締切が近くて余裕が無くなっているサインだ。
言われた通り、椅子の上に腰をおろす。
「今日は何をすればいいんですか」
鞄を床に起きながら、こちらをまだ一度も見ない彼に尋ねた。
「これを着てベッドの上に座ってるだけ」
そう言って真っ赤なドレスを渡される。
やっとこっちを向いてくれた。
座ってるんじゃなくて寝てるの間違いでしょ。
そう口答えしたくなったけどやめておこう。
「わかりました」
おとなしくドレスを受け取ると、あたしは寝室へと向かった。