着せ替え人形
20:00
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奈津子の仕事の都合もあって、打ち合わせは遅めの時間に始まった。
会場は彼女の仕事先の近くの個室居酒屋。
本当は自宅でやる予定だったが、
仕事を終えてそのまま来る彼女をもてなしてやれるような料理を俺が作れるはずもなく…
結局こうなってしまった。
こういうところでの打ち合せは初めてだ。
彼女とお酒を飲むのも初めて。
っていうか…酒が入る前から人気の小説家を目の前にして、彼女のテンションはいつもよりも高かった。
「人気作家の高宮さんに、こんな形でお会いできるなんて光栄です」
そう言って嬉しそうに名刺を眺める奈津子。
「いや、こちらこそこんなに小説のイメージとピッタリの女性に出会えて嬉しいです」
蚊帳の外になりかけている自分の立ち位置を見て、イライラは増していった。