着せ替え人形
「僕が大学時代に慕ってた女性との話ですよ。
結局は玉砕で終わるんですけどね。
だから…この深刻そうな顔してるのとか良いと思うんですけど」
そう言って彼が指差したのは、眉根をひそめて悩ましげな彼女の写真。
自分も…彼が恋い焦がれていた彼女の面影を思い出したら、これが一番しっくりくると思っていたとはさすがに言えなかった。
「大学時代ってことは、一ノ瀬さんもお知り合いなんですよね?
こういうイメージの方なんですか?」
ダイレクトな質問に、さらに心搏数が上がる。
「…まあ」
「じゃあこれにしましょうよ。
これなら私だって言っても誰も気付かなさそうですし」
そんなお気楽な彼女の発言を聞いて、一気に緊張はとけて微笑んでしまった。
「君の判断基準っていつもそれだよね。
いいよ、じゃあそれで決定」
そう言ってその場で高宮に写真を手渡した。