着せ替え人形
「あ…ありがとうございます。
何かお探しですか?」
彼の言葉はやわらかくスルーしたかったのだが…その後彼の口から出たのは予想外の言葉だった。
「あぁ、メイクのうまい綺麗な女性を探してまして。
お姉さんがすごく僕のイメージにピッタリだったんで、声をかけさせてもらったんですよ」
…うん。
この仕事を始めてからもう2年になるけど、こんなことは初めてだ。
どうやって断ったらいいか考えているあたしを見て、彼は笑った。
その時の笑顔はなかなか悪くなかったな。