着せ替え人形
「ズルいですよ、一ノ瀬さんは。
いつも余裕だし、抵抗する隙もくれないんだもん」
「からかわれるのは嫌?」
恥ずかしがる彼女を見たらつい、いじめたくなってしまった。
「ほらまた…」
「いいから」
「嫌…じゃないです」
にやっと笑う自分を客観的に見て、幼稚だとは思いながらも、もっと彼女の感情を露にしたいと思ってしまう。
「じゃあたまには…そっちからおいでよ」
隣に座る彼女の顔を覗き込んだ。
調子に乗りすぎたかな?
…なんて思ってたのも束の間、
先程まで頬を赤らめていた彼女が、何のためらいもなくキスをしてきたからこちらが余裕を無くしてしまった。
唇が少し触れただけなのに、頭がクラクラする。
「奈津子…?」
そっと唇を離された瞬間、間抜けな声を出してしまった。