着せ替え人形


「そんなに驚かないでくださいよ。
しろって言ったの、一ノ瀬さんじゃないですか」


「あぁ…」


完璧に向こうのペースに持っていかれるとこだった。
まだ意識は朦朧としている。

今顔を見せたらいけないと思い、ケータイを見るふりをして彼女から顔を背けた。


「…ごめんね。
俺、いつもやることが子供だよな」


自分が情けなくなって、謝罪の言葉しか出てこない。


「急にどうしたんですか」

優しい声で彼女が言った。


「もう少し大人にならなきゃなって、こっちの話」


「じゃあ私も大人らしくなれるように頑張ってみようかな」


そんなことを言ったから思わず笑ってしまった。


正直言えば、今隣にいる彼女のことを可愛いと思っている自分がいる。


「君はそのままでいてくれればいいよ」


「じゃあこのままでいます」



…従順な子。


それなのに自我もちゃんと持っているから、ここまでこんな形でも一緒に仕事ができたんだなとつくづく思った。


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