着せ替え人形
ふと目をテレビにやると、東京の桜は満開になるまで1週間ほどかかるだろうと、女子アナが言っていた。
ちょうど連休の日とかぶってしまう。
「タイミング悪…」
もう五分咲きでもなんでもいいから、早いうちに撮ってもらおうかな。
それで、これ以上気まずくなりたくないからその時にこの思いを伝える。
それで振られて逃げてきちゃえばいいんだ。
私にとってみれば、そっちの辞職の仕方のほうがずっと納得できるもん。
もはや自暴自棄としか言えないようだけど、タイムリミットと一ノ瀬さんのこの間の冷たい目が、私のことを急かすんだから仕方ない。
勢いづいた私はケータイを開き、電話帳から彼の番号を見つけると、即座に通話ボタンを押した。
緊張で少し手が震える。