着せ替え人形


「…わかった。
いつにする?
東京で撮るとなると、1週間後くらいがちょうどよさそうだけど」


一ノ瀬さんも、ちゃんと開花の時期を調べてくれてたんだろうか。


「あの…実家に帰る日に間に合わせたいんで、もう少し早くしてもらえますか?」


「いつ帰るの?」


「1週間後…」


そう答えると、ため息が聞こえた。


「もう少し期限を早めに言えよなぁ…
奈津子って、明日は仕事何時に終わるの?」


「17時ですけど…」


控えめにそう言うと、小声で彼がぶつぶつ言うのが聞こえたけど、何を言ってるのかまでは聞こえなかった。


「…じゃあ明日の22時くらいに、こっち来てくれないかな?
あ、すっぴんでいいから。
撮影の時着るものと化粧品持参で来ること。
わかった?」


「あ…はい」


彼の勢いに押されてまともに考えずに返事をしてしまった。


「じゃあそれで」


一方的に電話は切られた。

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