着せ替え人形
『でもね、今はあなたの幸せそうな顔が見れるなら、それで十分。
こんなことあたしが言える立場じゃないのは分かってるけど…
ただ、あなたが正しいと思ったことがあなたにとっては正解なんだから。
もう過去に縛られてちゃダメよ?
あたしも…ちゃんと自立するから。ね?』
そう言うと寂しそうに彼女は笑った。
たまらなくなって、彼女に手を伸ばそうとした瞬間、眠りは醒まされた。
「…一ノ瀬さん、大丈夫ですか?」
目尻に冷たいものを感じ、本当に泣いてことに気付く。
ゆっくりと重たい目蓋をあげた。
優しい笑顔をした綺麗な和服姿の女性が、俺の顔を覗き込んでいる。
思わず鼓動が早くなって…無意識のうちに抱きついていた。