着せ替え人形
「…嫌な夢でも見ました?」
「ううん、素敵な夢だったよ。
でも…君が起こしてくれてよかった」
この胸の苦しさを彼女に汲み取ってほしい。
そんな気持ちを込めて、彼女を抱く手の力を強めた。
「珍しく甘えたがりじゃないですか」
恥ずかしそうにそう言いながら、俺の髪を撫でる彼女。
あんなに切ない夢から覚めたのに、俺の心は締め付けられて苦しくなる一方だった。
「ごめんね…写真撮ろうか」
腕を解いて、ゆっくり起き上がる。
「もう大丈夫なんですか?」
「うん。
それと…着物姿が早くちゃんと見たいし」
笑って恥ずかしい気持ちを隠した。
人前で泣いたのなんて久しぶりだからなぁ。
「ちゃんと素敵に写真に収めてくださいね」
目尻の涙を指で拭いながら、彼女が答えてくれた。
さあ、気を取り直さないと。