着せ替え人形
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真夜中の田舎町は、自分達の他に誰もいないんじゃないかと思うほど静かだ。
庭に出て、ライトをつけた。
暗すぎず明るすぎず、いい感じに和服姿の彼女の優美な雰囲気を引き立てている。
彼女のお母さんのお下がりだというその着物は、桜の色をしていて華奢な彼女によく似合っていたし、
暗やみにもよく映えていた。
こんなに風流なセットで写真を撮ったのは初めてだ。
少しだけ緊張してしまう。
「今日は手出しできないから、全部君に任せるよ」
ファインダー越しに声をかけると、彼女は得意げに笑った。
その瞬間も逃さずシャッターを切る。
嬉しそうに桜を見上げたと思ったら、次の一枚を撮るときには憂いを帯びた目をしたり…
俺の知らない間に、この子はずいぶんとモデルとしてのスキルを上げていたらしい。