着せ替え人形
3:00
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「本当に着物のままで大丈夫か?」
部屋に戻り着替えずに帰るという彼女に対して、最終確認を行った。
「途中で酔っても何もできないからな?」
「大丈夫ですよ。
乗り物酔いとかしないんで」
大げさに心配する俺を見て、ちょっと呆れた様子で答える彼女。
「それならいいけど。
ごめん、荷物持って先に乗っててもらっていい?」
「あ、わかりました」
鍵を渡すと、お邪魔しましたと一言告げて部屋を出ていった。
…さて、本当に片を付けるのはこれからだな。
二階に勢い良く上がって、空の元自室のドアを開ける。
ほこりの匂い。
一つ取り残された机の引き出しから、一冊のアルバムといくつかの現像されてないフィルムを取出し、乱暴に鞄のなかに詰め込んだ。
「久しぶり。
また親がいるときにその内帰るよ」
バカみたいだと思ったけど、住み慣れた部屋に向かってそう告げた。