着せ替え人形

3:00



3:00


「本当に着物のままで大丈夫か?」


部屋に戻り着替えずに帰るという彼女に対して、最終確認を行った。


「途中で酔っても何もできないからな?」


「大丈夫ですよ。
乗り物酔いとかしないんで」


大げさに心配する俺を見て、ちょっと呆れた様子で答える彼女。


「それならいいけど。
ごめん、荷物持って先に乗っててもらっていい?」


「あ、わかりました」


鍵を渡すと、お邪魔しましたと一言告げて部屋を出ていった。



…さて、本当に片を付けるのはこれからだな。



二階に勢い良く上がって、空の元自室のドアを開ける。


ほこりの匂い。


一つ取り残された机の引き出しから、一冊のアルバムといくつかの現像されてないフィルムを取出し、乱暴に鞄のなかに詰め込んだ。

「久しぶり。
また親がいるときにその内帰るよ」


バカみたいだと思ったけど、住み慣れた部屋に向かってそう告げた。


< 82 / 107 >

この作品をシェア

pagetop