着せ替え人形
電気よし
鍵よし
忘れ物もなし
一通り確認すると車のなかにもどった。
さっき泣いたせいだろうか。
助手席の彼女は瞼を重たそうにしながら、何も見えない窓の外を見つめていた。
…もう現実に帰らないと。
「お待たせ。
鞄、持っててもらえる?」
先ほど色々つめた鞄を彼女に手渡し、アクセルを踏む。
彼女の仕事までには余裕で間に合いそうだ。
「眠くないですか?」
心配そうに彼女は尋ねてくるけど、目はすっかり冴えてしまっていた。
「大丈夫だよ。
君こそ仕事中に寝るなよ?」
「その辺の意識は高いんで大丈夫ですよ。
それに、この数時間の間に色々ありすぎて今は寝れそうにないです」
そう言って微笑む彼女。