着せ替え人形


「…彼女、きっと一ノ瀬さんに付き合ってもらえて幸せだったと思いますよ」


少し照れながら彼女が言った。


「…どうだろうね」


正直、そう言える自信はなかった。


「だって、一ノ瀬さんが女性といるのに手出さないってすごいことですよ!」



真剣に彼女は言ってくれてるんだろうが、バカにしているようにしか聞こえないんだが。


「…怒らせたいの?」


冗談でそう尋ねると、


「いや…純粋にうらやましいなって」



その一言で急に顔が熱くなった。


…これ以上俺を混乱させるなよなぁ。


< 89 / 107 >

この作品をシェア

pagetop