いわし雲のように【SS集】
誰にだって先入観ってやつがあるもんだ。
例えば、裸足で革靴を履いてる男はモテ男気取りであるとか、髪と肌の色があべこべな奴は頭が悪いだとか、太ってる人は動きが鈍重であるとか。
そういった“色メガネ”で他人を遠目から判断してたんじゃ本当に豊かな出逢いなんてものは訪れない。
そもそもそういう人間に限って先入観で自分を判断されるとやたらと反発をするもんだ。
人付き合いを選ぶ?
お宅は何様だ、って話。
だから俺はあることを常に実行している。
それこそが“メガネ”だ。但し度が入ってないやつ。
この見かけに騙されないやつを俺は探している。
かれこれ20年。
だがいまだに見破ったやつに俺は出逢っていない。中々上手くはいかないもんだ。
そうこうしている内に──
本当に目が悪くなってしまった俺は、度を入れたメガネをかけなければならなくなったのだった。
無念。