いわし雲のように【SS集】

 こらえきれない衝動に駆られる瞬間というものが誰にもあると思うのね。

 例えば給料日前のバーゲンセールであったり、ダイエット中の焼肉であったり、はたまた煮え切らない彼氏への「結婚、する気ある?」のひとことであったり。

 そして往々にしてこの手の行為はやってから後悔することになる。

 わかってはいるのよ。

 これらが“ろくでもない”結果にしかならないことくらい。

 けれども。

 それでもやめられないから『衝動的な行動』というのであって、これを制御出来るならば『衝動』なんて言葉はこの世に存在する理由がない。

 そうでしょう?

 意志が弱いといわれれば確かにその通りで、ぐうの音も出ないけれど。

 かといって、他人様に迷惑をかけないのであれば別段いいではないかとも思う。

 カレーのライスとルーと生卵をぐちゃぐちゃに混ぜようとも。

 マグロの刺身にマヨネーズをつけて食べようとも。

 外回りと称して季節の変わり目のバーゲンセールにいこうとも。

 コンビニの棚にあるお気に入りのアイドルの写真が載った雑誌を買うお金が惜しいからといって店員が商品の入れ替えをしている隙をついてこっそりその写真だけコピー機でコピーしてしまうとも。

 うん。

 これはすべて仕方のないことなのよ。

 え?

 それは軽犯罪じゃないかって?

 そうなの?

 でもさ。

 その場合当然カラーコピーするわけだから1ページ辺りの単価としては割高になるわけじゃない?

 だとしたらかれこれ雑誌10冊分はあるからむしろかなり売上に貢献してると思うのね。

 ほら。

 たまには“衝動”も役に立ってるってことじゃない?

 え?

 そういう問題じゃない?

 それは失礼致しました。

 以後気を付けます。

 ところで今日って水曜日だよね?

 あ、じゃぁコンビニいかなくっちゃ!

 あの雑誌の発売日じゃない!!

 そういうことで。

 バイバイ!

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