§Cherish§
§Cherish§ #1


大学を卒業し、就職難を潜り
抜け、大手商社に就職するも
…教職を諦めきれず、2年で
退職☆
念願叶って転職した先は……

──────────────


「お…重いっ!」

両手で抱えて持つのが精一杯
の大きな箱。
そこから溢れ返りそうな荷物。
そんな物と相撲をとりながら、
よろよろと歩く。

校内は…余りにも広かった。

『うわっ…アブねぇ!』
「え…っ?!」

前が良く見えず、曲がり角で
誰かとぶつかりそうになる。

体勢を崩した次の瞬間、当然
ながら、手から箱が滑り落ち
…彼を直撃…する筈だった。

『よ…っと~!』

彼は器用に箱をキャッチし、
ホッとしたように笑って、
『アンタ、大丈夫だった?』
と言った。

「え、あ…はい。」
『どこに運ぶんだ、これ。』
「英文科の、町田教授の…」

そこまで言うと、
『はいよ。』
と彼は歩き出す。

< 1 / 26 >

この作品をシェア

pagetop