§Cherish§
§Cherish§ #1
大学を卒業し、就職難を潜り
抜け、大手商社に就職するも
…教職を諦めきれず、2年で
退職☆
念願叶って転職した先は……
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「お…重いっ!」
両手で抱えて持つのが精一杯
の大きな箱。
そこから溢れ返りそうな荷物。
そんな物と相撲をとりながら、
よろよろと歩く。
校内は…余りにも広かった。
『うわっ…アブねぇ!』
「え…っ?!」
前が良く見えず、曲がり角で
誰かとぶつかりそうになる。
体勢を崩した次の瞬間、当然
ながら、手から箱が滑り落ち
…彼を直撃…する筈だった。
『よ…っと~!』
彼は器用に箱をキャッチし、
ホッとしたように笑って、
『アンタ、大丈夫だった?』
と言った。
「え、あ…はい。」
『どこに運ぶんだ、これ。』
「英文科の、町田教授の…」
そこまで言うと、
『はいよ。』
と彼は歩き出す。