§Cherish§
§Cherish§ #6
不意に背を向けられ、どうして
なのか、不安な気持ちになる。
柱に手を押し当てて、辛うじて
自力で立とうと足掻いてみる。
すると、各務君が顔を上げ、
『なぁ、早くおぶされよ…。』
と、涼しい表情で言った。
「だ…大丈夫だから…ほら♪」
挫いた足首をぷらぷらしてみる
…と、思わず顔が歪む。
『…あ~…世話が焼ける…。』
各務君が、本当に呆れ顔をした
次の瞬間、体がふわりと浮く。
「ちょ…何してるの?」
『お姫様抱っこ。』
シレッと交わされて、
「あの…顔…顔が…近いよ。」
と本音が飛び出した。
ドキドキが伝わりそう…。
そんな私にはお構いなしで、
『は?それより、先生の家って
どこ?俺、送ってくから。』
なんて言い出す、各務君。
「〇〇区春日町…かな?」
『“かな?”って何だよ…。
ま、近所だし、安心して。』
そう言ったかと思うと、回れ右
で改札を抜け、バス乗り場へ。