§Cherish§
§Cherish§ #7


終点までの約30分、各務君は
気持ち良さそうに眠っていた。

「各務君、終点よ?」
小さく声を掛けると、
『…ん~…あれ?寝てた?』
と、ばつが悪そうに笑うから、
「可愛かったけど?」
なんて、ちょっと苛めてみた。

『…置いてくよ?』
「やだっ、ごめんなさい!」

……はっ!!

『今のは、素直で可愛いな。』
各務君は不敵な笑みを浮かべ、
再び、私の前で背中を向ける。

『可愛いついでに、どうぞ。』
…ぎゃふんっ!やられた!!

私は、各務君の案外広い背中に
寄り添い、肩に腕を掛けると、
シトラス系のコロンの香りが、
何となくホッとさせてくれる。

『**先生…。』
「ん、なぁに?」

『…寝るなよ?』
「寝ませんっ!」

ムキになる私に、各務君は
『ホント、放っとけないな。』
と、笑いながら言った。

「えっ?!」
『歳上だとは思えないよ。』
「むぅ~っ…」
『そういう反応するから。』
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