§Cherish§
『それとも…期待してんの?』

そう言った各務君の片手には、
救急箱が掴まれていた。

『自分でできるか?』
「うん、大丈夫。」

各務君は、私の頭を撫でると、
台所に入っていった。

手当てをしながら、各務君の
方が気になってくる。

…料理なんて、出来るのかな?

手早く処置を済ませ、台所へ
向かってみると、想像以上に
手慣れた様子で料理を作って
いる、各務君の背中があった。

私の気配に気づいたのか、
『どうかした?』
と、包丁を置いて、各務君が
ふわりと笑って振り返る。

各務君は、優しい。
各務君の笑顔は、穏やか。

その穏やかさを、今は
壊してしまいたい

各務君の優しさは…罪だよ?
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