§Cherish§
§Cherish§ #9


私は、無意識に
……そう…本当に、無意識に
各務君の唇にキスをした。

各務君は一瞬だけ、戸惑いを
見せたけれど。

私の不意な行為に応える様に、
私の唇を求め、
私を強く抱き締めてくれた。

私の唇が僅かに開くと、各務
君の舌が滑り込んでくる。

舌と舌が絡み合い、次の瞬間、
各務君は舌を吸い上げた。

膝から崩れ落ちそうな、甘い
痺れに襲われて、私の理性は
吹き飛んでしまったらしい。










気だるいような快感の余韻を
感じ、微睡みから目覚めると、
ベッドに横たわった素肌の上
に、毛布が掛けられている。

そして、目の前には……
各務君の穏やかな寝顔がある。





私、
何てことをしちゃったんだろ。

出会ったばかりの男子学生と、
こんなことになるなんて。

私…どうかしてる。

自分自身の犯した取り返しの
つかない過ちに、情けなくて
涙が溢れてくる。

堪えきれずに洩らした嗚咽に、
各務君が目を覚ます。

『…どうしたんだよ?』
私の前髪を優しく掻き上げる
彼に、
「各務君…あの……私…」
と言いかける。
でも、後の言葉が続かない。

すると、各務君は察したかの
様に、
『俺は、後悔してないから。』
と囁いて、そっと微笑んだ。
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