§Cherish§
§Cherish§ #10
『俺は、後悔してないから。』
……どういう意味なんだろう。
私は、後悔してるのかしら?
……戸惑っているだけだわ。
これから先、どういう顔をして
会えば良いのか。
講師と、学生。
一線を越えてしまったことで、
何かが狂ってしまう気がして。
『腹、減ったな。』
各務君が、先に沈黙を破って、
ベッドから抜け出した。
「各務…君?」
『飯、食ってけよな。
……俺を喰ったついでに。』
「バ…バカっ!」
各務君の、屈託のない笑顔。
それだけで満たされていく。
…この感情は、何だろう…?
温かくて、いとおしくて……
あれ?
今、“いとおしい”って……?
私は、気づいてしまった。
気の迷いではあったけれど、
誰でも良かった訳じゃない。
各務君だから、良かったんだ。