§Cherish§
§Cherish§ #13
一通り洗い上げると、もう一度
ゆったりと湯船に浸かる。
着替えが乾かなきゃ、どのみち
帰れない訳だし……。
ふと、また“各務君の彼女”の
ことが頭に浮かぶ。
やっぱり、いるんだろうな…。
きっと、いると思うんだ…。
絶対、いるに決まってる…。
だって、各務君はカッコ良くて
優しいから…ね。
だから、悩むこと…なんてない
…のかも…知れない…よね?
…そうそう…悩んだりしたら、
逆に…迷惑かも…知れないよ?
“後悔しない”のと
“本気で好き”なのとは
…全く別の問題…だもん…ね?
あ~、気持ちいいな…お風呂…
各務君の抱っこ…みたい、だな
勢い良く、浴室のドアが開く。
『ちょ…っ、***っ?!』
各務君の顔色は青ざめて、腕を
力強く引っ張られる。
(あれ?各務君…どしたの…?)
引き上げられたものの、体中の
力が抜けて、上手く立てない。
「か…がみ、くん…、力が…」
『のぼせてるんだよ、バカ。』
ブカブカのバスローブを肩から
掛けられ、不覚にも、またまた
お姫様抱っこでベッドへ……。
『本気で、世話焼けるよな…』
各務君は、笑いを噛み堪える。
『ま、飽きなくていいかもな』
「か…がみ、くん…」
どうしても、今、訊きたくて、
彼のプルオーバーの裾を引く。
『んぁ?何すんだ……っ!』
軽く首が絞まったらしく、やや
怒った口調で振り向いた。
「彼女、いるの?」
『……へっ?!何で?』
「え~と…何となく…」
各務君は、額に手を当てて、
『彼女いたら、しねぇよ…』
とぼやく様に言った。