§Cherish§
§Cherish§ #14
『***、飯、食えるぞ!』
言うが速いか、各務君は、私を
ひょいと抱えて、食卓に運ぶ。
テーブルには、栄養バランスも
彩りも良さそうな和食が並んで
いた。
「各務君って…」
『え、誰?』
「だから、各務…」
『……誰?』
「……遼太郎。」
『よしっ!』
「意地悪な“お仕置き”ね…」
『……序ノ口。まぁ、食え。』
“序ノ口”って…まだあるの?
“序ノ口”って…何をする気?
各務君、恐るべし!
でも、料理はすごく美味しい!
……複雑だわ…。
料理はすごく繊細なのに…な。
あれこれ考えて、無言で食べる
私に、各務君は怪訝な顔で
『何?口に合わない?』
と聞くので、私は、慌てて首を
振り、
「すっごく美味しい!!本物の
料理人みたいだよ~!」
と、思ったままを口にする。
『だって、料理人だもん、俺。
居酒屋でバイトしてんの。』
ちょっと得意気な各務君の顔。
「今日は?」
『休み。だから、ビデオ借りて
観ようと思ってた。』
「……もしかして。」
ちょっとヘンな方向を考える。
『だったら、どうする?』
あらら…伝わったみたいね。
『ビデオは卒業できそうだ。』
「………………。」
惚けた顔で言う各務君に、赤面
するしかない私。