先生愛!
「平山さ~ん,平山権兵衛さ~ん。」
名字の『ひ』の音が聞こえただけで
体が反応する。
明らか平山権兵衛ッて私の名前じゃないじゃん…。
自分で自分にツッコむ。
苛立つ私のイライラメーターは
そろそろ頂点に到達する…。
その時,天使の声が…。
「柊さ~ん,柊しおりさ~ん。」
「はい―ッ!!」
立ち上がりながら返事をした。
どっから声出たんだろう?
と自分でも疑問視する程の声で返事をした。
点呼での返事や
卒業式での返事,
今までのどの返事よりも一番大きな声が出た。
あまりの嬉しさに。
やっと待ちに待った診察…!
気がつくと
おじいちゃん,おばあちゃん達が
ポカーンと口を開けて私を見上げている。
急に嬉しさと引き換えに
恥ずかしさが込み上げて来た。
顔を真っ赤にして
看護士さんの案内する診察室に入った。
穴があったら入りたい,とはこのことだ。
診察室に早く,入りたかった。
今まであんなに待ちわびた診察室だったけど
その時の入りたい,とは違った気分で
自分の身を隠すために,入りたかった。