先生愛!



「平山さ~ん,平山権兵衛さ~ん。」





名字の『ひ』の音が聞こえただけで
体が反応する。



明らか平山権兵衛ッて私の名前じゃないじゃん…。

自分で自分にツッコむ。






苛立つ私のイライラメーターは
そろそろ頂点に到達する…。








その時,天使の声が…。







「柊さ~ん,柊しおりさ~ん。」







「はい―ッ!!」
立ち上がりながら返事をした。






どっから声出たんだろう?
と自分でも疑問視する程の声で返事をした。

点呼での返事や
卒業式での返事,
今までのどの返事よりも一番大きな声が出た。



あまりの嬉しさに。

やっと待ちに待った診察…!







気がつくと
おじいちゃん,おばあちゃん達が
ポカーンと口を開けて私を見上げている。







急に嬉しさと引き換えに
恥ずかしさが込み上げて来た。


顔を真っ赤にして
看護士さんの案内する診察室に入った。




穴があったら入りたい,とはこのことだ。


診察室に早く,入りたかった。

今まであんなに待ちわびた診察室だったけど
その時の入りたい,とは違った気分で
自分の身を隠すために,入りたかった。



< 22 / 274 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop