先生愛!
今日は何か有名なアナウンサーが来るとかで
5,6限目は体育館へ。
体育館シューズに履き替え,袋に今まで吐いていたスリッパを入れて
ぐるぐる振り回して体育館に入る。
クスクスと横にいる美砂が笑っている。
「何よ。」
まだ朝のことを恨んでいる私はそっけなく横目で見ながら言う。
「しおりって本当に,幼稚園児みたいだね~」
「なっ!!!」
またもやひどいことを…。
「美砂ひっど~い!!最低だよ!」
「いやいや,その方が可愛いじゃん?!
しおりは小さいし…仕草が可愛いっていうか…。」
「あのねぇ!!美砂!?それフォローしてるつもりかもしんないけど,それ全然フォローになっ………美砂?…」
美砂は遠くを見つめていた。
すごく,悲しい目で。
その横顔は美しくも,寂しさをもまとっていた。
いつもの美砂からは,縁遠く悲しい,顔だった。
「美砂…?美砂!?」
美砂の肩を揺らす。
美砂ははっと我に返ったようで
「うっ,ううん!!何でもないよっ!!ほらっ,行こっ!!」
私の手を引いて走っていった。
アナウンサーは全然知らない人だった。
「ちぇっ,つまんないの。何が有名なのよ…。」
苛立ちながら,講演を適当に受け流す。
美砂…。
あなたのあんな顔を見たのは初めてだよ。
大丈夫かな…。
お調子者の美砂,
でも芯は強い。
ふざけてるようで,深刻に考えるような子。
あの,悲しそうな横顔が頭から離れなかった。