ライアープリンセス~偽りのお姫様~
「申し訳ありません!」
我に帰り身体を離す。
「ううん、ありがとう。」
涙は消え、いつもの笑顔があった。
「もう落ち着きました。健斗さんが…抱き締めてくれたから。」
この時は分からなかった。
病院へ行くことを拒否した心情を。
私の身を案じていたのだ。
責任問題にもなりかねないこの事態を。
別のところに気持ちがあった。
誰が夢叶様を傷付けたのか、誰の差しがねか。
ライバル企業か、御園家に恨みを持つ人物。
いや、今日の外出は急に決まったことで、内部の人間しか知らない。
内部…。
お屋敷の人間。
その時頭に浮かんだ人物…。