ライアープリンセス~偽りのお姫様~
第二章 立場
「夢叶、お迎えが来たよ。」
カバンひとつだけの私の荷物。
この学園を去る日が来るなんて、考えたこともなかった。
「…はい。」
歩く度に、ギシギシと音をたてる木の床も私にサヨナラを告げているよう。
「本当に行ってしまうのかい?」
そう聞いてきた園長先生の顔は固く重い表情に見えた。
園長も歳をとったなぁ。
昔はヒゲだって黒々としていたのに、今は白いものが混っていた。
私はただ、首を縦に振った。
「家内は、部屋から出て来ないんだよ。別れが辛いみたいで。ごめんね。」
「いえ、よろしく伝えて下さい。」
涙をこらえるのが精一杯だった。
毎日歩いて古い廊下が、にじんでよく見えない。