『勧善懲彼(かんぜんちょうかれ)迷惑な俺様彼氏』
紫さんは、陸渡にそう言われて、
やっと用事を思い出したようだ。
「忘れてた~!
実はね、今日は二人にお礼を言いにきたの!
私が海渡さんとうまくいくために、
色々手伝ってくれたお礼!」
「「お礼?」」
陸渡が驚くってことは、私と同じで
何のことだか分からないってことだ。
ふと、
少し離れて座っていた人影が、
そろりとその場を離れようとした。
陸渡もその気配に気づいたんだろう。
「おい、圭輔ぇ?
てめぇは、どこに行く気だぁ?」
なんだろう?
陸渡が圭輔相手にすごんだ声を出すなんて、
初めてだよ?