『勧善懲彼(かんぜんちょうかれ)迷惑な俺様彼氏』
玄関の鍵がガチャリと鳴ったのが聞こえて、
俺はテレビを見ながら、振り向きもせず、声をかけた。
「お帰り、陸渡。
意外に早かったね」
「おう」
この声。
どうやら機嫌は直ったらしい。
俺は、ほっとして、食べかけのお菓子に手を伸ばした。
横から陸渡の腕がにょきっと出てきて、
俺の承諾もなしに、
俺が買った好物のせんべいをひょいとつまんだ。
「あっ!」
俺が小さく声を上げると、
斜め上から、目玉だけをぎょろりと動かして、俺を見下ろす黒い瞳が・・・。
「なんでもないです」
俺は小さく答えた。