『勧善懲彼(かんぜんちょうかれ)迷惑な俺様彼氏』
「あ、そうだ、七海。明日、9時に駅前な。俺を待たせるなよ」
相方・・じゃなくて、陸渡が唐突に話を転換。
人の話なんて、聞いちゃいないもんね。
・・・ん?
「今なんて言った?」
「だから、俺を待たせるな!」
「いや、その前」
「あぁ?お前は耳が遠いのか、9時に駅前!」
・・・何それ?なんの話でしょうか。
「おっ、いいじゃん~。明日デートか。土曜だもんな。で、初デートの行き先は?」
話についていけない私を置き去りにして、陸渡と圭輔の会話は弾んでいく。
「動物園」
「うわっ、基本!」
「仕方ねぇだろ。七海が、若葉マークなんだ」
「あはは。七海ちゃんって、彼氏できたの初めてなのか。なるほどね、お前が慎重になるわけだ」
「うるさい。余計なこと言うな!」
機嫌の悪くなった陸渡と対照的な、圭輔のすっとぼけたような、明るい笑い声が響く。