『短編集』
「これっ!」
私は、神速の速さで、チョコの包みをこうたくんに渡すと、そのまま自転車に飛び乗った。
だめだ、こんなことして、本当におかしい子だ。
お疲れ様とかいって、普通に渡せばいいのに、私の馬鹿!
私がこうたくんに背を向けると、待って!!と、こうた君の大きな声がした。
私が振り返ると、こうた君の姿がない。
「ちょっと待ってよ!」
突然こうた君が、私の上から降ってわいた。
「ちょっと、危ないよ!鉄柵の高さ、けっこうあるのに!」
「そんなことよりさ、これって、チョコでしょ?今日バレンタインじゃん。
俺、もらっていいの?」
「えっと・・どうぞ。あまり物だけど」
「ふられたの?」
「いや、そうじゃなくて、友チョコのあまり」
こうた君は、ふ~んと言ったきり、押し黙った。