『短編集』
「10年目で、やっともらえたけど、あまりか~」
こうた君は、ちょっと唇を尖らせて、掌の上で私のチョコを転がした。
「え?今10年目って言った?どういう意味?」
こうた君は、照れたように顔を赤くすると、私から視線を逸らした。
「俺さ、幼稚園のとき、ひーちゃんがチョコくれるの待ってたんだよね」
「え?」
「お袋がさ、ひーちゃんがチョコくれるって内緒で教えてくれてさ」
「なっ!」
「毎日練習してるって、ひーちゃんのお母さんとうちのお袋が電話で話してたんだよ。
けど、すっげー楽しみにしてたのに、チョコもらえなくてさ」
しばらく落ち込んだんだよねー、って、いとも簡単に、こうた君は話してくれて。
・・うそ。