『短編集』
驚きで声も出ない私に、こうた君はとどめの一発を放った。
「余りもいいけどさ、来年は、俺のために作ってよ、なんてね」
こうた君は、茶化してたけど、私は自分の頬が赤くなるのを止められなかった。
「いいよ」
ポツリとつぶやく。
「え?!」
こうた君は、半分冗談だったんだろう。みるみるうちに、顔が赤くなった。
そっぽをむいて、言ってみるもんだなーって、頭をかいてる。
それから、私のほうを振り返って、今度ははっきりと告げた。
「明日、暇?」
私はこくりと頷いた。
幼稚園の奥から、こうた君を呼ぶ声が聞こえて、私たちの会話はそこで中断された。