『短編集』
恐る恐る玄関を開けると、
そこにいたのは・・
「マイ、大丈夫か?」
あんまり驚いて、
うぅん、うれしくて、
うれしすぎて、声にならないよ。
「タツ・・ャ・・。」
タツヤの両腕が、ふんわりあたしを包んでくれる。
あぁ、タツヤの匂いだ。
あたしは、タツヤの胸に顔をうずめた。
さっきまで冷たくなっていた手足に、
血液が巡っていくのが分かる。
しゃくりあげるあたしの背を、
小さな子供のように
さすって、
タツヤは、あたしの顔を覗きこんだ。
ふと、タツヤの足元を見ると、
ビニール袋が置いてある。
あたしの視線に気づいて、
タツヤが袋を持ち上げた。
「検査薬買ってきたんだ。
マイが悩んでるの、
気づかなくてごめんな。」