◆LOVERS◆ 大人の恋の短編集
あれから5年…。
それなりに恋はしたが、どれも長くは続かなかった。
一つの恋が終わるたび、より鮮やかに蘇るのは最後の夜の彼女の笑顔。
痛みを押し付けてしまった俺を、彼女は憎んでいるだろうか。
それとも俺の事など、とうに忘れてしまっているだろうか。
どうして重いと感じたのだろう。
彼女に我慢を強いていたのは俺自身だったのに。
彼女は羽を切られ鳥篭に閉じ込められた鳥だった。
俺は自由の無い彼女を愛でるだけ愛でて、最後には飛べないことを責めて捨てたのだ。
彼女の自由を奪い、縛りつけていたのは自分だったことから目を逸らして…。
俺は彼女の寂しさを、不安を、感じてやったことはあっただろうか?
彼女の微笑みの裏に隠された本音を、考えてやったことはあっただろうか?
彼女は一度でも俺に甘えたことはあっただろうか?