◆LOVERS◆ 大人の恋の短編集
俺は彼女の事を何も見ていなかった。
傷つけるだけ傷つけて、最後まで甘えたまま終わった余りにも幼い恋。
彼女はあの頃の俺をどう思っているだろう。
馬鹿な男だったと呆れているだろうか。
新しい恋をして、二度と思い出したくないと思っているだろうか。
それとも今夜のように月の蒼い夜は、少しでも懐かしいと思い出してくれることがあるだろうか。
失って初めてその存在の大きさを知り、あの日の事をどれだけ後悔しただろう。
いつかまた会えたら、きっと伝えよう。
護ってもらってばかりだったのに、気づきもしなかった事をごめん…と。
ひたむきに愛してくれてありがとう…と。
星の美しい夜は、胸の奥底で疼く甘い痛みを抱きしめる。
許されるものならば、もう一度あの日に戻って抱きしめたい。
忘れられない笑顔を。
++忘れられない笑顔 Fin++