◆LOVERS◆ 大人の恋の短編集
LOVERSⅢ BGM
**LOVERSⅢ** BGM
夏の夜が更けていく。
あなたの車の助手席は、いつだって私の指定席だった。
それなのに、今夜はまるで他人のもののように感じるのは、あなたの心が離れてしまっているからだろうか。
切なく悲しい別れの歌がカーラジオから流れ出す。
二人の恋の行方をそのまま映したような歌詞に、車内に妙に重苦しい空気が漂う。
それはまるで、運転席と助手席の僅かな距離に引かれた、見えない境界線のように感じた。
いつも太陽みたいに笑っていたあなた。
あなたの笑顔が少なくなったのは、いつの頃からだろう…。
それに気付きながらも、気付かないフリをしていたのは私。
あなたの視線が目の前の私ではなく、何処か遠くを見つめだした時から、いつかこんな日が来るのは分かっていた。
それでも、少しでもあなたの傍にいたくて…
現実を見るのが怖くて…
別れを切り出そうとするあなたの気配を感じるたびに、必死に明るく振舞って話題を逸らし続けていた。
私のその行動があなたを追い詰めていることにも気付かずに。