◆LOVERS◆ 大人の恋の短編集
俺、高畑晃があいつが出会ったのは中学のとき
一学年400人余りの学校では入学してから3年間名前も知らずに卒業していく奴も多い。
でも、俺は彼女を1年の時から知っていた。
小柄なくせに声だけは大きくて、気が強くて、正義感が強くて、涙もろくて、いつも誰かの為に一生懸命で、黒目がちな大きな瞳で真っ直ぐに人を見詰める凛としたその姿に、俺は恋をしたんだ。
後ろで高い位置に結ばれた長い黒髪を解くと、腰の位置まであること。
気が強いくせに虫がこわいこと。
いつも男子に雷を落としているくせに、自分は雷が苦手な事。
それから・・・本当は寂しがりやのに癖に、強がってばかりいる事。
クラスが違ったけど、廊下や放課後の部活や校舎のあちこちで、あいつの姿を無意識に探していたから2年間分の情報量は半端じゃない。
多分、この学校の誰よりもあいつを知っていると断言できる。
雪森 茜(ゆきもりあかね)あいつにこの気持ちを伝えるなら、同じクラスになれた今が最後のチャンスだ。
2年間見つめるだけだった。でも、中学最後の1年はあいつと一緒に思い出を作りたい。
モタモタしていたら、すぐ受験でまともに遊ぶ事も出来なくなるかもしれないし、高校だって離れてしまうかもしれないんだ。
このまま告白もしないで、そんなことになったら俺、絶対後悔する。
そう思って俺はあの日茜を校門の前で呼び止めたんだ。